第1回「絵と言葉のチカラ展」受賞・入選作品
第1回 絵と言葉のチカラ展 受賞・入選作品
グランプリ
- 絵/文 堀川理万子
《昭和16年12月「のら犬と臨時ニュース」》
2021年 65.2×65.2cm 透明水彩絵具、グアッシュ、テンペラ、水彩紙
路地で口笛を吹くと、のら犬が集まってくる。屋台で買ったおでんをあげるんだ。そして犬たちの頭をなでたり、ときどき、鼻をなめたりする(犬の鼻はしょっぱい)。そしたら、犬からジフテリアがうつっちゃった。それでぼくはかく離病棟に入院したんだ。お医者さんはもう犬の鼻をなめてはいけない、という(がっかりだ)。それはそうと、今朝、病院の廊下がざわざわしてて、ラジオの音が聞こえてきた。
「臨時ニュースヲ申シ上ゲマス 大本営陸海軍部12月8日午前6時発表...帝国陸海軍ハ本8日未明 西太平洋ニオイテアメリカイギリス軍ト戦闘状態二入レリ......」
「どういう意味?」と看護婦さんに聞くと、
「戦争が始まったのよ」と、教えてくれた。
「せんそうか...」
でもさ、とにかくぼくは犬たちに会いたい。はやくよくなって、はやく会いにいきたいんだ。
- 絵/文 堀川理万子
《昭和20年12月「たき火とリュックサック」》 2021年 65.2×65.2cm 透明水彩絵具、グアッシュ、テンペラ、水彩紙 戦争はおわったけど、食糧は不足したままだ。三ヶ日の駐屯地にいるおじさんが「米があるぞ」というので、行って、リュックいっぱいもらってきた。これだけあれば、お母さん、喜ぶな。 帰りは、駅で始発を待つことにした。知らない人が「おい、こっちに来てたき火にあたれよ」と、火のそばに座らせてくれた。ぱちぱち燃える火があったかくて眠くなる......。「さむ...」、目が覚めたら、たき火は消えていて、広場に一人で寝ていた。立ち上がって、気づいた。リュックがない!がっくりして家に帰るとお母さんが「おかえり。おや、米は?」と聞いた。「ない。とられたんだ...」と答えたあと、くちびるをぎゅっとかんだけど、お母さんの顔がにじんで見えなくなった。お母さんは、「なんてことだろう...でも、おまえが無事だったからよかったよ」といってくれた。でも、お母さん、ぼくはすごくくやしいよ。
NOBUKO賞
- 絵/文 山口暁子
《ソロモンの子供たち》
2021年 53.0×65.2cm 絹本着彩
子供の頃の話
森を歩けば小鳥が顔を見せに来た
カミキリ虫をてのひらに乗せても噛まれたりしないし
蝶やトンボは帽子にとまろうと追いかけてきたものだったまるでおとぎ話みたいだけれど
すべて本当のこと
ブローチみたいにトカゲを肩に乗せて
原っぱを歩き
いつまでも一緒に遊んだ
まるで動物と会話できるソロモン王の指輪を使っているみたい
そういう時は人間の子は混ぜない
それは私と小さい仲間たちとの暗黙のルールやがて魔法のような日々は終わり
不思議な思い出を胸に秘めたまま
私たちは大人になる大きくなった私は
懐かしい友に感謝をつたえ
誰もいない風景の中で
昔のように耳を澄ませる
あの時と変わらず風がざわめき木の葉が裏返るけれど
もう彼らの語りかけを聞き取ることができない
私の指輪は役割を終え
別の少女に引き継がれたのだろうか
私は静かにその場を後にする
受賞作品
- 齋正機賞
絵/文 大橋春菜子
《母の思い出》 - 齋正機賞
絵/文 大橋春菜子
《除夜の鐘の鳴る頃》 - 山下裕二賞
絵/文 見崎彰広
《かたすみ》 - 山下裕二賞
絵/文 見崎彰広
《分解》 - 芸術新潮」賞
絵/文 石居麻耶
《24》 - 上野松坂屋賞
絵/文 イノヤ ナオ
《春、通学路、睨み合い》
入選作品
絵/文 荒木瑠奈
《常初花》
絵/文 池上武男
《よわい八十九歳》
絵/文 石田 晃
《山下清とキース・ヘリング》
絵/文 伊藤万結
《母なるエレベーター》
絵/文 鵜飼義丈
《佇む。》
絵/文 王 杰
《遠くからの手紙》
絵/文 大石 恵子
《在りし日の輝き》
絵/文 大森梨紗子
《あしもとのそら》
絵/文 納 義純
《いい湯だな♪》
絵/文 川田芙有
《いつまでも》
絵/文 木村真光
《ねぇ、おにいちゃん》
絵 熊谷曜志/言葉 山田聖子
《鈍色の空、街の下で。》
絵/文 KUMA―YOSHI
《ある夕暮れに》
絵/文 弘保廣志
《闇と光ー虚実のフーガー》
絵/文 桜井 旭
《兄》
絵/文 笹岡照子
《インフルエンザも至福の時間(絵日記昭和30年)》
絵/文 笹岡照子
《なんなんなん組》
絵/文 佐藤健太郎
《あの日の夕焼けを忘れないよ。》
絵 柴田光恵/言葉 伏見浩之
《柿の実》
絵/文 白井由美
《夢中》
絵/文 鈴木藤成
《緑の夢》
絵 鈴木博稀/言葉 桐島あお
《明滅》
絵/文 關 加奈子
《生きる》
絵/文 仙-sen-
《光》
絵 高橋賢治/言葉 管 さやか
《Stay at home.》
絵/文 永井祥浩
《秘密と奇跡》
絵/文 野上 悟
《あったかい》
絵/文 野崎 慎
《讃歌》
絵 畠山詩月/言葉 畠山有加
《オリンピック》
絵/文 福永智子
《蛍唄》
絵 星野清和/言葉 星野典子
《通学路》
絵/文 水田彩生
《あたしのおしろ》
絵/文 MIRI
《コロナ禍でのお葬式》
絵/文 村山建司
《あの日の帰り道》
絵/文 毛利三蔵
《真の勝利者》
絵/文 門間夕星
《冬くる、わたし行く》
絵 谷下田朋美/言葉 門田奈穂子
《ラジオ体操と無花果》
絵/文 山田麻裕
《森》
絵/文 ルルナナ
《私達が毎日高らかに 歌うようにさえずるのは》
絵/文 渡邊 亮平
《閾/流入・流出》