第4回「絵と言葉のチカラ展」受賞作品紹介(3)
佳作賞
- 《時空列車》 絵・言葉 家村 誠
2024年 65.2×65.2 cm キャンバス、アクリル「ゴゴーッ」地響きの様な音と振動で私は目を覚ました。列車の心地よい揺れの中で、どうやらうたた寝をしていたようだ。「ここは何処だろう?」駅の標示は見当たらないが、列車は停止している。ぼうとした頭で数名の乗客が下車する姿を眺める。異国からの旅行者か、交わし合う言葉は全く理解できない。車窓に目をやると、まるで昔にタイムスリップしたような景色だ。「塩」とだけ書かれた看板、迷路のように続く石段、錆びたシャッターの扉、前に一度訪れたような、懐かしい感覚に背中を押され、私は列車から降りた。「オーイ!」乗っていた列車の先頭では、地元の子供たちが勝手に乗って遊んでいる。どうにものん気なところらしい。その中の一人が、こちらめがけて駆け寄ってくる。そうして私の前に立ち止まると、にーっと笑って、そのまま走り去ってしまった。「バイバーイ!」元気よく手を振る子供たちを後に残し、私は他の乗客と共に駅の出口に向かった。
- 《翠》 絵・言葉 片山 勝
2024年 37.9×45.5 cm 水干絵具、岩絵具、絹本広々とした田園の真ん中にポツンと農家の作業小屋がある。大好きなヒスイの色がいつもの道すがら目に止まる。なんとセンスのいい人だろう、壁にこの色を塗るなんて。それに波板トタンの錆具合も悪くない。
とりあえず写真を撮った。魅せられたついでにもうワンショットと接近した時、小屋の裏から突然人が!
カメラを構えた自分に疑惑の強い視線が...
交わす言葉が見つからない。
気まずい沈黙が思い出となってしまった。あれから何年経っただろうか。
今はもう小屋は無くなり、田んぼの向こうまで遮るものはない。
遠くの山脈が連なるばかりだ。
- 《恋する観覧車》 絵・言葉 柴田 明宏
2024年 45.5×53.0 cm 油彩はじめはそれと気づかずに
なんて嘘は申しません
決して小さくない穴に
自ら落ちた私です
どれほど時が経とうとも
これより先の私には
紡げそうにはありません
あなたのいない恋物語など観覧車に乗るための長い列にひとり並び
ゆっくりと回る色とりどりのゴンドラに
私の明日を託してみます私を運ぶゴンドラが もしも赤色だったなら
頼るところはないけれど
あなたに想い伝えてみます
私を運ぶゴンドラが もしも青色だったなら
眠れぬ夜を過ごしても
あなたの想いを待ってみます
私を運ぶゴンドラが もしも黄色か緑なら
恋など無かったことにして
別の人生歩んでみます
まわれ まわれ 観覧車
まわれ まわれ 恋する観覧車
- 《空》 絵・言葉 石原 花音
2024年 45.5×53.0 cm ペン、水彩月が沈み、日が昇る。
回る空の下、今日もいのちの音を紡ぐ。呼吸をする。まばたきをする。
たゆたう雲の行方を追う。
カーテンの波を見つめる。
反射する水面が揺れる。涙は雨になり、喜びは風になる。
不安は星になり、悩みは花となる。
やがて、感情が光の粒子となる。浮かんで、消えて、ぶつかって、光って。
空に溶けていく。人のあたたかさを知る。
時のきらめきを知る。
空の美しさを知る。誰も知らない空の果て。
紡がれた旋律は世界を回る。回る空の下、明日もいのちの音を紡ぐ。