「第3回 絵と言葉のチカラ展」受賞作品紹介(二)
齋 正機賞
- 《路地裏》 絵・言葉 家村 誠
2023年 S15 アクリル、キャンバス ウチの近くの廃工場。ここはボクたちの秘密基地だ。土曜日のお昼過ぎ、近所の仲間が集まった。「コウちゃん遅いなぁ。」「おっ!オート三輪、発見。」「よし!ハンドル動くぞ。」「こちら、スペースイーグル。スペースイーグル。応答願います。」「スペースイーグル、大変だ!後ろからブラックホールが近づいて来たぞ。」「了解。ワープで脱出します。」「ワープ開始、3秒前。3、2、1」そこへ、コウちゃんが息を弾ませ走って来た。「ぞうさん公園に紙芝居が来てるんだってさ。」思わず左ポケットの50円玉を手探りした。穴の開いた硬貨が指先に触れる。「よし!行こう。」何の紙芝居だろう?黄金バットだといいなぁ。「オレ、水あめ食べよ〜。」「オイラはソースせんべい。」みんな一斉に公園へ駆け出した。
山下裕二賞
- 《コグマ》 絵・言葉 藤井リベカ
2023年 31.5×43.0 cm 色鉛筆、アクリル お母ちゃんが編んでくれた帽子。 ふかふかの帽子。 初めてかぶったときは大きくてブカブカだったのに、
今はぴったり。 この帽子をかぶると強くなれるんだ。
しゃんとなるんだ。
魔法の帽子だよ。
どこまでも歩いていけるんだ。 でもね、時々、遠くまで行きすぎちゃって、急に怖くなる。
走って走ってまたお母ちゃんのところまで戻る。そしてお母ちゃんはおいらを抱きしめて、眠るまでお歌をうたってくれる。 お母ちゃんがね、大好き。 おいらはもうすぐお兄ちゃんになる。
ゆりかごの赤ちゃんが泣いたら、お歌をうたうんだ。
「芸術新潮」賞
- 《そこのけそこのけアタシがとーる》
絵・言葉 秦 健児
2023年 65.0×65.0 cm 油彩、キャンバス そこのけそこのけアタシがとーる
あっちにいけばタノシそう
そこにもスキなおかしやある
アシタはなにをしようかな
アタシはだれとあそぼかな
なんかロープがあるけれど
ジャマジャマおジャマ かんけーない
とおくのあそこもタノシそう
そこのけそこのけアタシがとーる
おうちはママパパまっている
上野松坂屋賞
- 《明日も》 絵・言葉 栗田なおみ
2023年 65.0×53.0 cm 油彩、キャンバス いつも同じ場所で待っている。 今日も青空にキャッキャッという声が響き、
僕たちの体も前後左右に大きく揺れた。
みんなと一緒に遊ぶ時がサイコー!
でも日暮れが近づくとひとりふたりと帰って行ってしまう。 長い夜の始まりだ。
僕たちは2 人で今日のことをあれこれと話したりして過ごし、
話し疲れるといつしか眠りに落ちてゆく。
そしてまた朝がくる。
遠くから子供たちの声が聞こえてきて、
やがて幸せの重さが全身に伝わる。 僕たちはいつも同じ場所で待っている。
明日も、またその次の日も。