「第3回 絵と言葉のチカラ展」受賞作品紹介(三)
佳作賞
- 《いつかの輝きに》
絵 内田喜久子 言葉 細貝智子
2018年 F10 油彩 前にも後ろにも進めなくなり
降りてしまったあの場所に 列車は
訪ねてみればまだそこに在った。 風雨や照りつける太陽に晒されてなお、
愚直に佇む姿に私は涙する。 中を覗くのが怖いのは
私が置いてきてしまった輝きが
胸を刺す程強く美しいと知っているから。 失くした訳ではなかったんだ
消え去った訳ではなかったんだ 錆びて傷んだままだけど、
きっといつまでもこの列車は
ここに在り続けるのだろう。 踵を返し私は、再び歩き出す。
- 《TOY SHOP》
絵・言葉
納 義純
2023年 変8 ミクストメディア シチリアへ旅に出た。 古い町並みを歩いてみると、レトロなオモチャ屋さんがあった。 ショーウィンドーに、へばりついてずぅーと眺めている少年がいた。 気に留めずにまた暫く町を散策した。 それから、どのぐらい経ったのだろう。
同じ通りに戻ってみると、少年は、まだ立っていた。 きっとショーウィンドウのオモチャが欲しいのだろう。 その後ろ姿が、幼き頃の自分に重なった。
- 《こころの行方》 絵・言葉 谷口朋栄
2023年 53.0×65.2 cm 天竺綿、岩絵具、アクリル、モデリングペースト 指先にふれたこころは
どんなかたちにも変わってゆく ふわふわ
やわらかく こうこう
ふたつにわかれて ゆらゆら
行くあてをさがしている 夜にぬりつぶされて
あたらしい朝がはじまるころ どんなかたちにも変わってゆける
- 《こえだ》
絵・言葉
野上 悟
2023年 F10 油彩、MDF ボード 公園で仲良し家族に出会った時の話でさ。しばらくはみんなでサッカーボールとかで遊んでいたんだけど、ちょっと疲れてきちゃった感じで、ベンチで休憩することにしたみたい。それでも、一番年下の女の子だけは、まだ遊び足りないみたくてさ、その辺に落ちている石とか枝を集めだしちゃったんだ。きっと、この女の子にとっては、この時はたからものみたいに見えていたに違いないな。
(オイラにとっては、女の子のこういう仕草もたからものなんだけどさ。) 集め過ぎちゃったもんだから、こぼれた小枝を拾い直そうとしてたんだけど、その女の子のお母さんが名前を呼ぶんだよ。 この時オイラは、気づいちゃったんだよね。だから、お笑い芸人をマネして、Tシャツをちょっとだけ持ち上げて、ちっちゃな声で「のがみっちです」をしちゃったよ。
(だって、「小枝」と「声だ」なんだもん。)
- 《大切な時間》 絵・言葉 則武ヤスヒロ
2023年 45.5×38.0 cm ミクストメディア 小さな命を身近に感じて過ごす大切な時間。
小鳥と自分の時間がひとつになる大切な時間。
生きとし生けるもの全てに対する愛・感謝を実感する時間。
愛するものと愛されるものが居る珠玉のロケーションを垣間みる幸せな時間。